破局前夜が新生前夜となる
戦争前夜が解放前夜となる
その希な望みを、私たちは棄てない。

特定非営利活動法人 前夜
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06/9/12   English  Korean
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前夜セミナーブック

「完璧な化石になりたい」・・・・・・
苦しいのに孤立させられ声が出せない日常――
「格差」の指摘だけでは現実は変えられない!

困難や矛盾を個人の内側に閉じこめ、新たな国家主義感覚をつくりだす現代日本社会のメカニズムを解き明かす


前夜セミナーブック   3月8日発売!予約注文受付中!

〈生きにくさ〉の根はどこにあるのか――格差社会と若者のいま

中西新太郎 

はじめに

1 ねじれた抑圧構造のなかの若者たち

単線的ライフコースは描けない/若者を一律には語れない/公的に是認される差別/教育の公共性・平等性/教育の機会均等/求められる個の〈かたち〉/愛の社会化力/自己肯定の共振(シンクロ)/「完璧な化石になりたい」/ディスニーと「カワイイ」/「せめて自分が幸福になるには」/没入に向かって自分を駆り立てる/バーチャルな世界とナショナルな統合

2 日本社会の抑圧・支配の新たなメカニズムを解く

1 現代日本の国家主義感覚

二十一世紀の国家主義とは何か/倒錯した感情を映す文化表象/高度成長期ナショナリズム――逆説的な国民化/経済ナショナリズム/「J化」「J国家主義」という感情/心地よい歴史・心地よい国家

2 「構造改革」と自己責任

無力性が導かれる様式/選択と自己責任のフィクション/自己責任論のポリティクス/「自由に決める」と「仕方がない」の間/「自己所有権テーゼ」を疑う/能力と自由のかかわり/「能力」は個人のものか?/自己決定権をめぐる議論の交錯

3 人間を消費する文化

消費文化とは何か/七〇年代をめぐる評価/消費文化のナショナルな転回/文化の脱政治性という神話/個体化を推し進めるもの/人格からキャラクターへ/相互承認のかたち/ジェンダー化される文化とその内的矛盾/消費文化の内側から崩れる意識

4 「シニカル理性」と権力

批判的機能の無力化/小泉首相の「レトリック」、小林よしのり氏の「自己語り」/「弱者と強者である」――内田樹氏の場合/シニカル理性の現実主義/「消費をつうじての抵抗」という幻想/文化的多数支配のやっかいさ/精神医学、脳科学、優性思想――回路をふさぐ言説/伝えることをつうじて聴く

3 〈生存権〉損壊の時代――「格差」の何が問題か

ずらされる「格差」の現実/ひろがる絶対的貧困/生活保護水準以下で生きざるをえないワーキング・プア/不平等化を支える教育政策/国家が教育をコントロールする/「人間のフリをする」/「自立」の意味/「真の弱者」をあぶり出すメカニズム/〈生存権〉損壊へのスパイラル/人権を担保していくには/社会権を制度として具体化させる

あとがき

◆文献一覧

四六判 144頁  発行 NPO前夜  発売 JRC  定価1300円+税  

●2007年3月8日発行●   *ご注文はお近くの書店またはNPO前夜03-5351-9260まで。
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「はじめに」より一部抜粋

 「生きづらさ」をトピックとして取り上げるのは容易である。この社会の「格差」をあげつらう数多くの言説がそのいい例だ。せいぜい、「ひどい社会だよね」と最後にコメントして終わる議論はしかし、生きづらい場所でそれでも生きねばならない現実には、決して近づいてゆかない。
 
 私たちはセミナーで生きづらさの問題をそんな仕方で扱ってはこなかった。言葉は現実を変えはしないけれど、生きづらい現実に抗うそれぞれの思いを集める触媒にはなりうる。言葉がそのようにはたらく場を、また、そうした場へと届く言葉を育てたいと考えてきた。〈話す-聴く〉という関係の全体に支えられて成り立つ時代への違和感の共有を追求した、と言ってもよいだろう。それだから、この記録はセミナーに参加してくれた方々の聴きとりをつうじた、応答をつうじた共鳴ぬきにはできあがらなかったのである。


3/28「信濃毎日新聞」文化欄で紹介!

 日本社会の変質と新たな抑圧を分析 中西さん セミナーの記録

 「格差社会」がさまざまに論じられている。しかしその言葉は、「苦しいけれど声が出せない日常」を生きる人たちの現実に、どれだけ届いているだろうか―。中西新太郎著「〈生きにくさ〉の根はどこにあるのか」は、そのような問いを基点におこなわれた連続セミナーの記録だ。
 横浜市立大学教員(社会哲学、現代日本社会論)の中西さんは、マンガなども資料に、子どもや若者にかかわる文化現象を具体的に示しながら、日本社会の変質と、国家主義や新自由主義による新たな支配・抑圧のメカニズムを分析。「生きづらいと思うことさえ許されない抑圧状況はいっそう深く、広く、この社会に進行している」と述べる。
 季刊誌「前夜」を発行するNPO前夜が、中西さんを講師に二〇〇五年に開催した連続セミナー「現代日本の社会的支配・抑圧」全四回と、翌年の「『差別と反人権』を問う」の最終回を収録。中西さんへのインタビュー、エッセーも収めた。


4/15「思想運動」書評欄で紹介!

 雨宮処凛(あまみやかりん)   絶望を彷徨う若者たちへのエール

  ちょっとこのオッサン、面白いんだけど!  読みながら、何度もそう叫んだ。多くのオッサンが「最近の若者は根性がない」などという安易な若者バッシングで溜飲を下げ、結果的にいっそうの断絶を生んでいる中で、中西氏は常識も価値観も、そして生き方すらも根底から覆された日本の中で彷徨う若者たちに寄り添い、そしてその構造を解説し、鮮やかにブッた切る。「明るく元気な自分」を振る舞うことでしか存在すら許されない教室。リストカットという表現様式。ゴスロリ。戦闘美少女。ライフコースの閉塞。そこから芽生えるJ国家主義、J戦士。なんだか自分のことを言われているようだ……。

 そして「抑圧された者たちをより無力にしていく思想的回路」としての自己責任論。経団連が目指す尊厳死制度という名の「貧乏人は早く死ね」という抑圧というよりは暴力。結局、この国で「生存」を許されているのは「自己責任で行動し自立してみずからを支える個、自分でリスクを負って自分の目指すものについて挑戦する『たくましい個』」だけだ。こんな生きにくい社会に誰がした。生きることへのハードルがどんどん高くなっていく中で、リストカットでもしなきゃやってられねー、というのはあまりにも「健全」ではないか。

 若者たちの「生存権」そのものが破壊されている。ネットカフェ難民や生活保護を受けられなくての餓死、自殺などが続いても手は打たれない。若者たちは「早く死んだほうがいいよ」というメッセージに日々さらされている。そしてみずからを責めている。

 わたしの世代の多くは「実験台」にされたと感じている。何が正しい生き方か、どうすれば最低限餓死しないか、そのモデルケースすら発見できていない中で、唯一突破口を開いたかに見えたホリエモンもあの通りだ。だけど、悪いのは決して若者だけではない。この本で中西氏はそうエールを送ってくれる。読み終わった後、著者に思いの丈を語りたくなった。

→6月22日・東大駒場キャンパスにて、中西新太郎×雨宮処凛トークセッション開催!詳しくはこちら